保育士会のあゆみ

昭和31年に誕生

全国保育士会は、「子どもたちの真の幸福を守るために保育士は手をつなぎ、たちあがろう!」という呼びかけに賛同した人たちの手によってつくられました。このような動きは、昭和29年に始まり、昭和31年7月に結成を見ました。当時の保育士たちのおかれている状況を「保母会10年のあゆみ」でふり返ると次のように記されています。

「あの当時は期末手当もないし、昇給はわずかということで、“こんなことでは保育士はいい仕事ができないのではないか。保育士の身分をもう少しよくしなければ、保育内容を高めるとか子どもを守るとはいえない”というように、保育士の身分保障を改善したい、社会的な地位を高めたい、研究の場もほしい、とただひたすら思いつづけました。」

この当時は、主任保母給与12,300円、保母7,600円(昭和23年)、期末手当ゼロという状態でした。超勤手当、通勤手当などもありませんでした。

保育士の制度的位置づけの向上をめざした取り組み

結成以来、身分保障の改善や社会的な地位向上を図るため、保育士給与のベースアップや期末手当の実現のための運動、受持児童数等の最低基準改善のための運動、乳幼児処遇の改善などの運動を、保育士会に結集して続けてきました。

保育所運営費における保育士の期末手当の積算額は、ゼロ→ 0.5ヵ月→ 1ヵ月→ 2ヵ月→ 3ヵ月となり、昭和37年度から国家公務員に準ずることになりました。また、昭和37年には3歳未満児9人に1人であった受持人数が、昭和42年には6人に1人となりました。また、平成10年からは乳児保育が一般化され、最低基準に乳児おおむね3人に1人の配置と記載されました。

昭和40年代後半から50年代前半かけては専門職としての社会的位置づけを得るため、資格制度の確立に向けた、いわゆる「保育士免許法」の制定をめざした活動を展開しました。

昭和50年代後半からは、最低基準上の職員配置の問題とともに、「主任保育士」の役割・機能に着目して、昭和57年度には「主任保母についての実態調査」を実施し、『主任保母の職務内容を考える』(昭和58年度)や『主任保母ハンドブック』(昭和62年度)をまとめました。同時に、予算対策活動を通じてクラス担任をしない主任保育士の専任配置の推進に取り組み、現在では、特別保育事業を実施している全保育所に主任保育士の配置が可能となりました。

平成13年度の保育士資格の法定化(国家資格化)に際して、全国保育士会では全国保育協議会とともに児童福祉法改正案の成立に向けて尽力しました。また、改正児童福祉法成立後は、新たに役割・業務とされた「保護者への保育指導」等の事項や、求められる高い倫理性に関する事項等の現任保育士への定着を図るために「全国保育士会倫理綱領」を策定し、国家資格「保育士」に求められる資質を高めるために、『全国保育士会倫理綱領ガイドブック』を作成しました(平成16年)。ガイドブックは、平成21年の保育所保育指針の改正(告示化)を受け、内容を見直し、『改訂版全国保育士会倫理綱領ガイドブック』として発行しています。

また、保育士の平均勤続年数は短く、自らの将来像を描きながら働くことが難しい状況にあることから、保育現場で経験を積み、研修受講により専門性を高めた保育士を「専門保育士(仮称)」として位置付けることなどを盛り込んだ「保育士のキャリアパスの構築に向けて」を平成23年12月に打ち出し、保育士が自らの専門性を向上させながら、誇りとやりがいを持って働き続けることができる環境構築の実現をめざしています。

保育士の資質向上と保育内容の充実強化に向けた取り組み

保育士会は「保育士の仕事は、人格形成期にある乳幼児の保育という大切な仕事」という考えのもとに、これまで研究・研修を積み重ねてきました。
その保育実践をもとに、昭和52年度には、活動指針になるようまとめた『保育所保育要領(昭和41年度版)』の改訂版を出しました。また、全国の保育士の交流や保育内容の向上をめざして、昭和42年度より全国保母研究大会、昭和49年度より東西日本保母研修会を毎年開催しており、これは現在も全国保育士会研究大会、全国保育士研修会として継続されています。

その他、保育者自らの手による研究活動の活性化を図るため、昭和43年度より都道府県・指定都市保育士会への委託研究を実施してきました。委託研究は平成3年度から全国保育士会研究大会での発表のための実践研究論文集『全国保育士会研究紀要』に引き継がれ、各地の研究活動の活性化を支えるとともに、発表の場を提供しています。

昭和53年度からは、保育所給食のさらなる充実発展をめざし、本会の中に食事担当者の研究組織を設置し、研修会の開催や調査研究活動に取り組みました。その後、平成9年に本会総務部の中に「給食研究委員会」を位置づけ、さらに、平成21年度に改正された「保育所保育指針」では「食育の推進」が明記されたことから、名称を「食育推進委員会」に変更し、より充実した食育の推進のために「全国保育士会食育推進ビジョン」の策定などに取り組みました。

また、保育者の資質の向上や保育の充実強化をめざして、平成7年度に『保育日誌の書き方・活かし方』、平成10年度には環境に着目した事例集『環境ってなんだろう』、平成11年度には日常の保育活動の充実強化に向けて『保育に活かせる事例集』、平成13年度には、子育て相談の記録用紙等を例示した『記録のポイント』、平成17年度には「保育所における障害のある子ども、医療的ケアを要する子どもへの対応事例集」を作成しました。

そのほか、平成17年度より保護者と保育所とのパートナーシップ構築の具体化に向けた「保育の個別計画」の様式の検討を行い、平成20年度に『質を高める 保育の個別計画』を作成しました。
さらに、平成21年4月より施行された改定保育所保育指針では、3歳未満児については一人ひとりの子どもの個別的な計画を作成することとされたことに伴い、同年より「保育の個別計画」の普及を図るため、本会として「保育の個別計画」研修会を開催してきました。平成25年度以降はより一層の普及を図るため、各ブロックや都道府県・指定都市にて研修会を開催していくこととし、平成24年度の研修会はそのための講師養成と位置づけ、実施しました。

また、本会結成30周年を機に、念願であった主任保育士の系統的な現任訓練による専門性の確立に向けた実績づくりを目的に、「主任保育士特別講座」(平成27年度より、主任保育士・主幹保育教諭特別講座に改称)を開講し、現在1,600名を超える修了生が各地で保育のリーダーとして活躍しています。
平成16年度から検討をすすめてきた「保育士の研修体系」は、平成18年度に『保育士の研修体系~保育士の階層別に求められる専門性~』としてとりまとめました(平成23年3月改訂)。現在は、全国保育協議会と協力し「保育活動専門員認証制度」の実施や、「研修体系」にもとづく全国研修などをとおして研修の充実に取り組んでいます。

調査研究では、平成18年度に、在宅子育て家庭における課題や今後の方向性を明らかにするために、一時保育利用者・地域子育て支援センター利用者の実態とニーズについて調査を、平成21年には保育所児童保育要録に関する市町村の取り組み状況の把握や、小学校との連携強化を推進するために「保育所と小学校の連携に関する調査」を実施しました。

保育士の専門性の周知を図る取り組み

昭和53年の国際児童年には、保育所で育つ子どもたちの姿や、保育士の仕事等を広く一般に理解を深めてもらうために映画「はばたけ子どもたち-保育者の願いをこめて」を保育士によってつくりあげました。

昭和56年度には、社会的課題となったベビーホテル問題を契機に、延長保育・夜間保育・産休あけ保育などの保育ニーズの多様化に応えることを目的に特別保育対策委員会を設置し、保育者としての考え方をまとめ発表しました。

また、地域の子育てセンターとしての役割期待に応えるために、「子育て電話相談」、「育児教室(育児講座)」を全国の保育所でモデル的に実施しました。さらに、幼稚園と保育所の関係をふまえ、「改訂保育所保育要領」の検討を行うとともに、保育所、保育者の役割を社会に広め、その必要性を認識してもらうことをねらいとした「一日保母(保育士)」運動を翌年より推進しました。

平成4年には乳児期の食事の重要性への認識をどう促すかに視点を当てた、冊子『いそがしいおかあさんのために(楽しい離乳食の手引き)』を作成し、平成13年度には、その内容を改訂した『離乳食のQ&A』を作成しました。

平成15年度には、保育士および保育所が地域の子育て支援の担い手であることを発信するために、そして地域とともに次世代育成に積極的にとりくむために、『ボランティア・保育体験等受け入れのすすめ~保育所のためのなるほどQ&A』を作成しました。

平成20年度からは「保育士がこたえる子育てQ&A」を本会ホームページ上に公開しました。これは「子育てする喜びを実感できる社会づくり」の推進の一環として取り組んだもので、保護者から日ごろよく受ける育児相談や疑問に対して、保育士の専門性にもとづくアドバイスを広く社会に向けて発信していくために行っているものです。

平成22年度からは、地域子育て支援を推進する保育士を支援するため、「全国保育士会保育士バッジ」を作成しその普及に努めています。子育て支援の対象者に安心感を持っていただくとともに、保育士自身が保育士としての自覚と誇りを高めることにもつながっています。

また、社会保障と税の一体改革の柱の一つとして、平成24年8月に可決・成立した子ども・子育て関連3法をもとに、あらたな制度の詳細な検討が進められていた際には、本会は、適切な保育内容と保育環境の重要性について保護者や地域社会に理解していただき、保育所・保育士と地域とが一体となって一人ひとりの子どもの最善の利益を守る流れを生み出していくために、保育の重要性や保育士の専門性に関する情報の「発信」強化に取り組みました。

制度的課題に対応するための取り組み

平成15年度から、「主任保育士専任配置の推進と制度的位置づけの明確化」に向けた運動を展開し、「特別保育事業等複数実施保育所」を実施する保育所で専任配置ができるようになりました。

また、平成11年度に保育所保育の拠り所とされている「保育所保育指針」の改定が行われた際には、指針の利用者である現場の立場から「意見」や「提言」を発信し、よりよい改定をめざしました。さらに、改定「保育所保育指針」の通知後、いち早く『ハンディー保育所保育指針』を刊行、研究大会や研修会を通じて、12年度からの施行に向けた実践の充実につなげるための取り組みを図りました。

児童福祉法施行令の改正が行われ、平成11年度より男女共通名称「保育士」が創設されることとなり、本会も平成10年に「全国保母会」から現在の「全国保育士会」へと組織名称を変更しました。

このころから保育所や保育士に、地域社会における子育て支援の役割・業務が求められてきた社会状況や、保育士のもつ社会的信用に乗じて名称を詐称し、乳幼児への虐待や不適切な保育を行う悪質な認可外保育施設への対策として、保育士資格を法定化して資格制度の整備を図る動きが高まり、その結果、平成13年11月26日、第153回臨時国会において保育士資格の法定化(国家資格化)を含む児童福祉法の一部改正案が可決・成立し、同30日に公布されました。この法律の制定過程では、全国保育士会は全国保育協議会とともに法案成立に向け全国的な活動を展開しました。

平成20年3月28日に、「保育所保育指針」は3回目の見直しが行われ、それまでの局長通知から厚生労働大臣による告示(遵守すべき法令の位置づけ)となりました。告示化にともない、子ども、保護者や地域の実情に応じ、それぞれの保育所が創意工夫し保育を行えるように、内容の大綱化が図られました。この改定への対応として、本会では「保育所保育指針検討委員会」を設置し、保育実践に基づく検討を行い新指針への反映を図るとともに、保育現場がスムーズに新指針による保育に取り組めるよう、平成20年度に『実践から学ぶ保育所保育指針』を作成しました。また、改定の理念と理解を広めるために研修会やセミナーを開催しました。

少子化対策が国の最重要課題とされる中で、平成22年3月より「子ども・子育て新システム検討会議」においてその具現化のための検討がすすめられ、全国保育士会としては、平成22年9月より開始された『こども指針(仮称)ワーキングチーム』に御園顧問(当時会長)が構成員として参画し、保育士の視点から養護と教育の一体的な提供のあるべき姿や、子どもの育ちを保障するために必要な職員の処遇の改善等について主張してきました。

こうした国における新たな子ども・子育てにかかる制度の検討を経て、子ども・子育て関連3法(「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」、「子ども・子育て支援法」、「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)の成立に至りました。(平成24年8月10日成立、同22日公布)

これを受け、厚生労働省と文部科学省との合同の検討会議にて、新たな幼保連携型認定こども園における教育・保育等の内容に関する検討が進められました。第3回検討会議(平成25年9月27日)では関係団体ヒアリングが実施され、全国保育協議会副会長および全国保育士会会長として上村初美会長が出席し、保育には教育が含まれており、保育は養護と教育が一体となって行われていることや、保護者支援・地域の子育て支援といった福祉の役割・機能を盛り込むべきであること等について、保育現場に携わる者の立場から意見を述べました。この検討結果は、平成26年4月30日に、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」として告示されました。

その後、同要領の具体的内容を解説した、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説」が平成26年12月に示され、平成27年4月に、子ども・子育て支援新制度が施行されました。